分子レベルでがんの研究が進んだ結果、乳がんは遺伝子レベルで4つのタイプに分かれることがわかりました。
遺伝子検査は実用的でないため免疫染色を用いて簡便に4つのサブタイプに分類することが一般的になっています。
この分類により薬物療法の効果を予測できるようになりました。
乳がんには進行期による分類もありますが、最近は、乳がんの性質による分類をもとにしての治療法が主になっています。
今回は、治療に重要な乳がんの性質による分類についてお話しします。
■性質による分類
エストロゲン受容体 | プロゲステロン受容体 | HER2受容体 | |
---|---|---|---|
ルミナルA型 | どちらかが陽性 | 陰性 | |
ルミナルB型 | どちらかが陽性 | 陽性および陰性の一部 | |
HER2型 | 陰性 | 陰性 | 陽性 |
トリプルネガティブ | 陰性 | 陰性 | 陰性 |
ホルモン療法はエストロゲン受容体ならば効果があります。
分子標的治療薬のトラスツズマブはHER2受容体が陽性ならば効果があります。
ホルモン陽性タイプ
ルミナルA型はホルモン療法は効くのですが、HER2受容体は陰性なので分子標的治療薬のトラスツズマブは効かないタイプです。
がんはもとの細胞に近い顔をしている(高分化型)ほどタチがよいと言われます。
ルミナルA型は文化度も高く、全般的にがんとしてはおとなしいタイプだと言われています。
乳がん患者さんの5割はこのルミナルA型に分類されます。
これに対してルミナルB(HER2陽性)型はどの治療も効果が期待できます。
といえば非常に治りやすく思えますが、薬物治療がなければ成績の悪いタイプです。
しかし最近は適切な治療で成績はよくなっています。
ルミナルB(HER2陰性)型はルミナルA型に似ていますが、がんの増殖する能力が高く再発率も高く抗がん剤が有効という特徴があります。
ルミナルA型とルミナルB型はKi67という増殖マーカーのスコアで分類します。14%以下がA型、14%より高値をB型と分類しています。
HER2陽性タイプ
以前は非常にタチが悪いタイプだとされてきました。
しかし、それは以前の話です。
今はこのタイプに効くトラスツズマブという分子標的治療薬ができましたので、かなり治療成績もよくなりました。
トリプルネガティブタイプ
どの受容体も持たないこのタイプはやっかいだと言われています。
このタイプにはホルモン剤もトラスツズマブも効かないので治療がむずかしいタイプのがんだと言われ続けていました。
でも、今はこのタイプのがんの研究も進んできていますし、近いうちに効果のある薬もできてくることを願います。
私の場合からすると
私はトリプルネガティブタイプでエストロゲン受容体が陽性まではいかない、プラスマイナスといったところです。
これを踏まえると、治療成績がよくない厄介なタイプのがんということになります。
でも、HER2陽性タイプの乳がんも何年か前までは有効なお薬がなく、おまけに進行が早い悪性度の高いタイプのがんだと言われていたのです。
場合によってはトリプルネガティブタイプのがんよりも恐れられていたかもしれません。
しかし、年月と共に薬の開発による治療が可能になったわけです。
医療の世界は技術の進歩が早く目まぐるしく変わります。半年後、一年後はどうなるかわかりません。
精神的にネガティブになって必要以上に不安に思うと、普段の生活さえ平常心で過ごせなくなってしまいます。
本当に怖いのは病気そのものではなくて、その病気によって、気持ちが変化し、自分が自分らしく生活できなくなることのように思います。
今現在あなたは「乳がん」という病気になってしまって、自分をどう扱っていいか持て余しているかもしれませんね。
周囲の環境は昨日と何一つ変わっていないように思えるのに、自分の気持ちだけが別の世界に独りぼっちで放り出された気分ではないでしょうか?
人間は凄い生き物だと思います。
環境に適応していけます。
つらいことや受け入れられないことを少しずつ乗り越え、受け入れていくことができる強い生命力をもっています。
あなたが今つらく暗闇から這い上がれなくても、必ず明るい日常の生活の中に戻っていくことができるはずです。
今、乳がんになる方は年々増えてきていて、昔に比べて患者さん同士のネットワークも増えつつあります。
患者会やネット上でのブログなど悩みを吐き出し共有する場もあります。
家族という強い味方もいます。
一人で抱え込むのではなく、頼るべきところは頼りながら、弱音を吐きつつ一歩でも前に進んでいってほしいと強く思います。
乳がんについての他の記事についてはこちらをどうぞ
👇
あなたにも知ってほしい!乳がん「トリプルネガティブ」の私が体験した治療や検査
不安や聞きたい事など何でもかまいません。コメント・メッセージください。